紫苑と今昔物語
紫苑(シオン)はキク科シオン属(アスター属)の植物で花期は9月から10月。日本では平安時代以前から確認されています。
花言葉は「追憶」「君を忘れない」「遠方にある人を思う」
これらの花言葉の由来は『今昔物語集』に収められている、二人の兄弟による物語と言われています。
『今昔物語集』とは平安時代後期の説話集で、「今は昔…」から始まる千余りの説話が収められています。
あるところに二人の兄弟がいました。
ある日、父親を亡くした二人は嘆き悲しみ、その日以降父親の事を忘れることなく墓参りを続けていました。
しかし年月が経つにつれ、兄は仕事が忙しくなり、父親を亡くした悲しみを忘れる為に、見た人が思いを忘れてしまうといわれる萱草を墓へ植えました。
次第に兄は墓参りに来ることがなくなりました。
一方、弟は父親の事を忘れないように、見た人の心にあるものを決して忘れさせないといわれる紫苑を墓に植え、それ以降も墓参りを続けました。
さらに年月がたったある日、いつものように弟が墓参りをすると、墓の中から鬼が語りかけてきました。
この鬼は、父親の屍を守っている鬼で、父親の事を想う弟の心根に感心し、弟に予知能力を授けました。
身の上に起こることを予知することができるようになった弟は幸せに暮らしました。
というお話です。
嬉しいことなど、忘れたくないことがあるときには紫苑。愁いなど、忘れたいことがあるときには萱草を、植えると良いと語り伝えられています。
紫苑の生花(しょうか) 一種生けです。
大葉物に分類される紫苑は、「真副の間遠く、副体の間短く」生けます。
花は出生に則して高く用い、葉の和合の内から生じます。
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